症例報告

症例報告

【ご注意】以下のページには手術中の写真が含まれています。あらかじめご了承の上お進みいただけますようお願い申し上げます。

脾臓の血管肉腫

2021.06.08
◆雑種(ヨークシャーテリア×マルチーズ) 11歳11カ月 避妊メス 体重 4.0k g
◆稟告 食欲廃絶 

◆検査
超音波検査にて脾臓の腫大と複数の大きな結節を確認。

◆治療①
脾臓の腫瘍を疑い、手術を提案。


4.0㎏の犬にとって、摘出した脾臓は巨大な占拠病変として食欲廃絶の根源になっていたと思われる。
摘出により、元気食欲は改善。

◆診断
血管肉腫は血管内皮細胞由来の悪性腫瘍でその挙動は非常に悪い。
主に、脾臓・肝臓・心臓に好発するが、皮膚・骨・腹壁など身体の全ての部位において発生しうる。
脾臓の血管肉腫は、脆弱化した病変組織からの腹腔内出血や、続発する凝固異常(DIC)や多臓器不全、
および播種転移・遠隔転移など様々な悪い挙動を示す。

◆治療②
制癌剤
ドキソルビシンという制癌剤を 3 週間毎・計 6 回使う。
この子は、飼主様の同意が得られたので、抜糸の日に 1 回目の制癌剤を投与。

◆考察
残念ながら、根治のできない悪性腫瘍です。
ですが持続する腹腔内出血からの救命、失血のよる突然死の予防、 そのほか 様々な全身状態の 改善を 目指し可能な場合は外科的摘出します。
手術の後は、制癌剤 の投与を提案します。
制癌剤の効果 には個体差があり、短期間で再発再燃を認める ケースも多々あります。
まれではありますが、中には制癌剤により術後 1 年以上、元気に過ごしてくれる子もいます。
現在の健やかな日々が、一日でも長く続くよう 可能な治療は 提案し サポートしたいと思います 。