症例報告

症例報告

【ご注意】以下のページには手術中の写真が含まれています。あらかじめご了承の上お進みいただけますようお願い申し上げます。

膝蓋骨内方脱臼

2023.04.28
◆ポメラニアン 1歳8カ月 去勢オス 8.56㎏
◆稟告 顕著な跛行は無いものの、仔犬の時から両側性の膝蓋骨内方脱臼を認める。

◆診断
膝蓋骨内方脱臼/グレード3

  

◆治療
外科による整復術

これは、滑車溝という部位で、膝蓋骨はこの滑車溝に沿って上下移動をします。
グレード3の犬は、膝蓋骨が常時内方に脱臼しているため、左写真の様に溝がほとんどありません。
そこで、右写真の様に骨を切り出して、しっかりとした溝を形成します。
これにより、整復した膝蓋骨は、滑車溝の上に留まってくれます。

内方脱臼している膝蓋骨(赤矢印)が、正常な部位に整復(青矢印)されていることが確認できます。
今回の手術に先んじて、もう一方の足は2カ月前に同様の手術を終えております。
黄色矢印は膝蓋靭帯の遠位起始部を外側に移動し固定するための術式です。
この脛骨粗面の外側転移により、膝蓋骨をより安定に導きます。
他にも、縫工筋の離断、外側関節包の縫縮など、通常は4個の術式を組み合わせて手術を行います。

◆考察
小型犬の膝蓋骨脱臼では、顕著な跛行を示さないケースもしばしば見受けられます。
しかし、よく観察すると「散歩が好きではない」「すぐに座り込む」「背中を丸めて、腰を落とした姿勢で歩く」「活発でない」など不明瞭な症状が、潜んでいることがほとんどです。
この様な症状は、手術をすると、多くが改善してくれます。
グレード3(常時脱臼)以上の膝蓋骨脱臼は、わかりやすい跛行が無くとも、全て手術適応と考えます。