症例報告

症例報告

【ご注意】以下のページには手術中の写真が含まれています。あらかじめご了承の上お進みいただけますようお願い申し上げます。

犬の全耳道切除術

2022.05.07
◆柴犬 4歳10カ月令 未去勢オス
◆稟告 2020年6月以来、持続する外耳炎。耳を掻いたり、頭を振ったり、強い不快感を認める。

◆検査
X線検査を実施。

黄矢印:黒く写る外耳道が確認できる。(正常所見)
赤矢印:外耳道は白く写り、広範囲の石灰化が疑われる。(異常所見)


◆治療
全耳道切除術

手術は耳介を残し、凹凸のある耳道入口の炎症部位を可能な限り広範囲に切除する。(写真:左)
硬化した耳道を切除後、残存する粘膜を完全に除去し、鼓室胞内も慎重に郭清する。(写真:右)

術後3週間。耳介は残すので被毛が生えそろえば、美容的外貌は損なわれない。

◆診断
過形成病変、線維症(高度)を伴う慢性外耳道炎。

◆考察
内科的治療に反応しない慢性外耳炎は少なからず存在し、炎症が中耳や内耳に波及し重篤化する前に外科的介入を判断する必要がある。
顔面神経麻痺などの合併症も比較的高率で認めるため、注意を要する手術である事には変わりない。
また、炎症部位の完全切除は困難で、炎症の再燃も報告される。
聴力に関しては、骨導聴力(鼓膜を介さない)により保たれるとされる。
健やかなQOLを維持するためには必要な手術であると考えられる。